「生きる喜びを見つける」     黒田 朔

どうしようもない厳しい現実につぶされそうになる。しかし、変えることのできない現実の中で、新しい人生を見つけた人がいる。

「いのちが 一番大切だと 思っていたころ 生きるのが 苦しかった 命より大切なものが あると知った日 生きているのが 嬉しかった」


 星野富弘さん・・念願の中学の体操の先生となり、たった2ヶ月、部活の指導中、頚髄損傷で肩から下は完全麻痺、「口から入れて、尻から出すだけの土管のような人生、生きていて何になる。」しかし、自殺さえできない体になって、星野さんの心に高校時代の友人が置いて帰った聖書のことばが残りました。「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます」(マタイ11:28)


その時、「私は聖書のほんの一部しか、それもほんの上っ面しか分かっていなかったが、『私の所に来なさい』と言うキリストの言葉に素直についていきたいと思った。私の今の苦しみは洗礼を受けたからと言って少なくなるものではないと思うけれど、人を羨んだり、憎んだり、赦せなかったり、そういう醜い自分を忍耐強く赦してくれる神の前にひざまずきたかった。・・罪を犯すかもしれない、苦しいとわめき散らすかもしれない、でも『父よ。彼らをお許しください。彼らは何をしているのか自分で分からないのです』と十字架の上から言った清らかな方にしたがって生きてみようと思った」。(星野冨広著「愛、深き淵より」より)
その時、星野さんの心が変わり、この詩が生まれました。「いのちが 一番大切だと 思っていたころ 生きるのが 苦しかった 命より大切なものが あると知った日 生きているのが 嬉しかった」指一本動かせない体で「確かに体が動かないことは不自由です、でも不幸とは違います。」と話す星野さんに人生を喜びとする生き方を見せて貰いました。

 

 


2022年02月28日